バイトテロの法的責任と会社の対応方法

バイトテロの法的責任はどこにあるの?

バイトテロが起こった際の適切な会社の対応方法とは?

バイトテロを未然に防ぐ方法はある?

2013年ごろから、相次いだバイトテロの背景にはSNSの普及も関係しています。

しかし2021年にもバイトテロが起こっていることから、万が一のことを考えて会社の対応方法を理解する必要があるでしょう。

そこで本記事では、バイトテロの法的責任と会社の対応方法について解説します。

■この記事を読むと分かること

  • バイトテロの法的責任の所在
  • バイトテロが起きてしまったあとの会社の対応方法
  • バイトテロを未然に防ぐ方法

他にも、バイトテロを起こした人がどうなるのかについても紹介します。

ちなみに本記事を社員やアルバイトに読んでもらうだけでも、バイトテロが防げるようにまとめています。

バイトテロの法的責任はどこにある?

まずはバイトテロの法的責任ですが、所在はもちろん本人にあります
刑事・民事、それぞれで責任が問われることとなります。

(1)刑事責任

まず、投稿内容が会社の名誉や信用を棄損する内容であった場合、名誉棄損罪や侮辱罪が成立するおそれがあります。また、投稿の内容によっては、威力業務妨害罪が成立するおそれもあります。悪質な事案の場合、会社としては刑事告訴をすることも検討するべきでしょう。

(2)民事責任

会社はバイトテロを行った社員に対して、被った損害を賠償請求することが考えられます。問題は損害の範囲ですが、バイトテロの対象となった商品(主に食料品)及びその廃棄費用、清掃・消毒が必要な場合はその費用等が考えられます。

引用:バイトテロの法的責任と会社の対応方法(弁護士法人法律事務所瀬合パートナーズ)

しかし企業名は間違いなく傷つき、ブランドの信頼性は大きく崩れます。
いくら法的責任がバイトテロを起こした本人にあるといっても、世間的には企業名が注目されるでしょう。

バイトテロを起こされた企業は、起こした本人への損害賠償などを請求して世間に対処したことを公表する必要があります。

バイトテロが起こったときの会社の対応方法

つづいて、バイトテロが起こったときの会社の対応方法を紹介します。

以下の9つを、各会社の方針に従って行いましょう。

  1. 企業の顧問弁護士に相談する
  2. 該当の投稿を削除させる
  3. 防犯カメラで状況を確認する
  4. アルバイトや社員全員を集めて今後の対応を説明する
  5. 企業の公式アカウントなどで謝罪を行う
  6. 記者会見を行う
  7. 再犯防止の方法を考案して社内で共有する
  8. バイトテロを行った人の懲戒処分や損害賠償請求をする
  9. SNSで再犯防止についての掲載を行う

一連の流れについて、以下で詳しく解説します。

1.企業の顧問弁護士に相談する

まずは、会社の顧問弁護士に相談しましょう。
炎上した投稿を慌てて削除するのではなく、その対応が正しいかといった判断も含めて弁護士へ相談します。

ここからは顧問弁護士と一蓮托生で対応を進めていくため、なによりも先に相談を行うことがポイントです。

2.該当の投稿を削除させる

会社の顧問弁護士と相談したうえで、該当する投稿の削除をしたほうが良いと判断した場合はこのタイミングで行いましょう。

炎上原因の投稿を削除すると、その行為に対する批判もかならず発生します

対応方法を決定したうえで削除を行うと、よりスムーズに事態を収められるでしょう。

3.防犯カメラで状況を確認する

つぎに、バイトテロがどのような状況で行われたかを確認します。
証拠の保全も含めて、防犯カメラなどを確認してください。

このタイミングでバイトテロを起こした本人を呼び出し、事情聴取を行います。

複数人いる場合は、関係している全員から事情聴取すると証拠の信頼性も高まります。

4.アルバイトや社員全員を集めて今後の対応を説明する

世間に謝罪などをする前に、炎上中の企業に勤めている全社員へ現状を報告します。

社員1人ひとりの今後や、各個人のケアなどについても検討すると良いでしょう。

社員やアルバイトの人材流出を防ぐという意味でも、世間への対応前に会社内へ説明会を開くことをおすすめします。

5.企業の公式アカウントなどで謝罪を行う

ここで、ようやく世間への謝罪を行います。
法的責任はバイトテロを起こした本人にあるものの、炎上を抑えるには企業としての説明責任が伴います。

まずは現状と本人への対応、商品やサービスが安全であることの証明を書類に起こしてSNSなどに投稿すると良いでしょう。

記者会見を行う場合は、この書類にその旨を記載しておくと炎上の拡散力が一時的に収まるかもしれません。

6.記者会見を行う

バイトテロの場合、企業も被害者です。
しかし被害を受けた側の企業が、然るべき場所で謝罪を行うことで炎上ではなく同情が集まりやすくなります

記者会見では、公式のSNSアカウントに掲載した謝罪文の内容やその後に決定した方針などを説明すると良いでしょう。

顧問弁護士も同席し、内容を精査しながら質問回答形式で記者会見を行うとより良い印象を残せるはずです。

7.再犯防止の方法を考案して社内で共有する

ひと通りバイトテロの炎上が落ち着いたら、社内で再犯防止の方法を考案してください。

原因と対策方法、炎上後の対応についても検討して社内で共有しておきましょう。
一度炎上すると数年は注目が集まるので、再犯は絶対にないよう対策する必要があります。

8.バイトテロを行った人の懲戒処分や損害賠償請求をする

再犯防止の方法を検討するのと同時進行で、バイトテロを行った人への処分も行います。

まずは懲戒免職をして、顧問弁護士と相談し損害賠償の請求に入ります。

示談で解決することが多いですが、その際にも対応をかならず顧問弁護士と相談しましょう。

9.SNSで再犯防止についての掲載を行う

SNS炎上後、8つ目までの対策を行えば十分ではあります。
しかし9つ目の「再犯防止対策についての報告」がSNS上で行えると、企業の印象が高くなるでしょう。

そもそもこのころには炎上が落ち着いていると予想できるため、そのまま風化させたいのが一般的な企業の考え方です。

ただこのような状況下で、社内にて検討した対策方法を発表するだけでも好印象です。
前向きに真摯な対応をする企業であると高評価をもらえるでしょう。

バイトテロを未然に防ぐ方法

ここまでバイトテロが起きた際について解説してきましたが、ここからは未然に防ぐ方法も紹介します。

  • SNS教育として「自分ごと」と感じさせる研修を行う
  • スマートフォンの持ち込みを禁止する
  • SNSの投稿を監視する
  • 採用時に身元保証書の提出を求める
  • バイトテロを起こしそうな人を採用しない

最低限、上記5つの方法を導入してバイトテロを未然に防ぎましょう。

SNS教育として「自分ごと」と感じさせる研修を行う

バイトテロを未然に防ぐ方法、1つ目は「研修を行う」です。

実際にバイトテロを起こす人は、社員よりもアルバイトとして雇用されている人が多いですよね。
これには、短期間かつ時給での雇用によって責任感が欠如しやすいという理由があります。

そこでSNS教育として研修を行い、アルバイトでも「自分ごと」と感じさせるように対策をしましょう。

スマートフォンの持ち込みを禁止する

バイトテロを未然に防ぐ方法、2つ目は「スマートフォンの持ち込みを禁止する」です。

炎上事例にはバックヤードでのバイトテロが非常に多く、ほとんどがスマートフォンで撮影されてSNSに投稿されています。

したがって撮影や投稿ができる環境自体を排除し、根源をなくすのもおすすめです。

SNSの投稿を監視する

バイトテロを未然に防ぐ方法、3つ目は「SNSの投稿を監視する」です。

有人で監視するのは難しいのですが、AIツールを用いれば簡単に行えます
月次報告書を、雇用している社員全体に共有するのもおすすめです。

ちなみにおすすめのツールは、以下の記事で紹介しています。

採用時に身元保証書の提出を求める

バイトテロを未然に防ぐ方法、4つ目は「採用時に身元保証書の提出を求める」です。

採用するとき、学校名などの個人情報を聞かない会社も多くあります。
しかしバイトテロが発生した場合に、会社側から連絡できるといった環境をつくっておくと未然に防げるでしょう。

個人のSNSアカウントなどを把握するのもおすすめです。

バイトテロを起こしそうな人を採用しない

バイトテロを未然に防ぐ方法、5つ目は「採用時に判断する」です。

採用する際、あまりにも素行が悪そうだったり態度に違和感があったりするなら雇用しないようにしてください。

ただし当たり前ですが、一般的な学生に見えてもバイトテロを起こす人はいます。
これだけに頼らず、複数の方法を同時に導入してみてください。

バイトテロを起こした本人の未来で起こりえる問題

さいごに、バイトテロを起こした本人の未来で起こりえる問題を紹介します。

さまざまなケースが考えられるので、今回は一般的な以下の6つを解説します。

  1. 炎上の火種となった投稿から個人の特定が行われる
  2. 個人情報が流出して関係者への迷惑をかける
  3. 企業から炎上による被害の損害賠償を受ける
  4. 身内や友人などと疎遠になる可能性がある
  5. 就職・結婚ができなくなる可能性がある
  6. 自分の子どもにまで影響が及ぶ

バイトテロを未然に防ぐ方法として、こちらを社内全体に共有するのもおすすめです。

1.炎上の火種となった投稿から個人の特定が行われる

バイトテロを起こすと、SNSの情報から個人の特定が行われることがほとんどです。
顔写真や氏名、学校名、自宅の住所などあらゆる情報が流出するでしょう。

流出した内容は、デジタルタトゥーとして今後一生消えません

2.個人情報が流出して関係者への迷惑をかける

バイトテロを起こして個人情報が特定されると、企業だけでなく身内などにも影響します。

家族の情報が流出したり、自宅への嫌がらせが頻発したりする可能性があります。

ほかにも同僚や上司など、会社関連で仲良くしている人にも迷惑をかける恐れがあります。

3.企業から炎上による被害の損害賠償を受ける

起こしたバイトテロの大きさに関わらず、ブランドの信頼性を失ったとして損害賠償請求が行われます

炎上が落ち着くまでに発生しうる損害も含まれるため、数百~数千万円の金額が請求されるでしょう。

バイトテロを起こした本人が未成年などの場合は、支払い責任が親へ移ります。

4.身内や友人などと疎遠になる可能性がある

バイトテロを起こし身元を特定されると、周囲の人間と疎遠になることが多いでしょう。

「迷惑をかけられるかも」「仲良いと思われたくない」といった理由で、孤独を感じることになりそうです。

過去の炎上事例では、両親が離婚することありました。

5.就職・結婚ができなくなる可能性がある

一度炎上すると、デジタルタトゥーとして個人情報が残ります。
すると就職や結婚など、大きなライフイベントが叶わなくなる可能性もあるでしょう。

当たり前ですが、リスクのある人間を雇用する会社も家族に迎え入れるパートナーも少ないです。

一度の炎上で、今後の人生を破綻させることももちろんあります。

6.自分の子どもにまで影響が及ぶ

たとえ炎上したときに学生だったとしても、将来結婚して子どもを授かったときに影響が及ぶ場合もあります。

SNSはさらに進化するため、いつ子どもの周りで過去の行いがバレるかは予測できません。

最悪の場合、自分が原因で子どもがいじめられたりパートナーが噂の的にされたりする可能性もあります。

まとめ

本記事では、バイトテロの法的責任と会社の対応方法について解説しました。

バイトテロは会社側だけで完全に防げるものではなく、起きてしまったあとの正しい対処方法もありません。

したがって万が一のことを考え、炎上が起きてしまったあとの対応方法は把握しておきましょう

またツールなどを導入して、炎上のリスクを減らしておくことをおすすめします。