サジェスト汚染は違法?過去の判例や汚染の影響も紹介
サジェスト汚染が違法な行為であるかどうかについて知っていますか?
この記事では「サジェスト汚染の違法性」について解説していきます。結論、サジェスト汚染については適用される権利が曖昧で判決も曖昧になってしまうことが多いです。
サジェスト汚染を検討する際、わかりづらい「サジェスト汚染の違法性」を調査した結果をまとめたので、ぜひ見ていただければと思います。
その他にも「サジェスト汚染」の説明や、「違法とされにくい理由」について説明していきたいと思いますので、ぜひこの記事を読んでサジェスト汚染の違法性について知っていただければ幸いです。
また「逆SEO対策業者」について知りたい方は、こちらで解説を行っていますのでぜひ確認してみてくださいね。
サジェスト汚染は違法?
サジェスト汚染は、明確に違法とは言い切れません。その理由は、過去の裁判結果が曖昧で違法と認められたケースとそうでないケースの双方があるからです。
背景には司法の中でもサジェスト汚染の実情を理解できていないこともあるでしょう。しかし、実際に違法と認められたケースもあるので、もしサジェスト汚染で悩んでいる人がいれば、インターネットに強い弁護士に相談することをおすすめします。
サジェスト汚染に関する判例
検索サイト「グーグル(Google)」利用者の男性が、自分の名前をGoogleに入力すると、身に覚えのない犯罪行為が表示されるとして、米Googleに表示をやめるように求めて提起していた訴訟で、2013年4月15日、東京地方裁判所において判決が言い渡された。東京地裁は「無関係の単語を閲覧しやすい状況を放置し、男性の社会的評価を低下させた」として名誉棄損やプライバシー侵害に当たると認定。Googleに対して表示の停止と慰謝料30万円の支払いを命じた。
これは、日本国内でネガティブなサジェストワードの表示停止を認めた初めての判決です。ネガティブなサジェストが社会的評価を下げて、原告の主張を認めたケースなので、サジェスト汚染が全く違法性の無いといえる根拠ともなります。
該当の男性は、裁判前からGoogle側にサジェストを消すように依頼していましたが応じず、訴訟にまで発展したとのことです。しかし、判決後もGoogle側はサジェストワードの削除に応じておらず、裁判までしても消えない可能性も否定できません。
Googleに削除申請をしても、すべての申請が受け入れられるわけではないことを覚えておくといいでしょう。
サジェスト汚染が違法になりにくい理由とは?
サジェスト汚染が違法になりにくい理由には、
- 忘れられる権利が認められにくい
- 名誉毀損と認定されにくい
- 人格侵害に当たらないとされることが多い
- サジェスト汚染を規定した法律がなく権利の範囲が曖昧になる
- 検索エンジンの公共性の担保
が挙げられます。
忘れられる権利が認められにくい
検索結果に過去の犯罪履歴が表示されないようにする「忘れられる権利」は、非常に認められにくい点が理由の1つです。これは、表現の自由や知る権利に抵触する恐れがあるため、忘れられる権利を認めることに裁判所は慎重になることが背景にあります。
いつまでも逮捕歴や前科情報が検索結果に表示されてしまうと、本人の更生にも悪影響なので忘れられる権利を認める意義はあるでしょう。しかし、知る権利と表現の自由とは相反するもので、憲法で認められていることから、簡単に忘れられる権利を認めることも難しいのは事実です。
名誉毀損と認定されにくい
単語だけで名誉を毀損したと認定されづらいことも理由の1つです。検索結果で表示されるサジェストは、あくまでも単語の羅列なので、それだけで判断できません。
たとえば「人名+恐喝」の検索結果が出た場合、この人が恐喝したのか、恐喝にあったのか、恐喝に詳しい法律家なのか、など単語の羅列だけなので詳細は理解するのは難しいです。そのため、サジェストで表示されただけで名誉毀損と認定するのは難しいといえるでしょう。
人格権侵害に当たらないとされることが多い
サジェスト汚染だけでは人格侵害に当たらないとされることも多いです。単語が表示されるだけなので、それだけで人格権を傷つけたとは言えないのではないかとGoogle側も過去の裁判で主張しています。
サジェストは、あくまでも検索結果として単語が表示されるだけで、それだけで人格権侵害というのは難しいかもしれません。
サジェスト汚染を規定した法律がなく権利の範囲が曖昧になる
サジェスト汚染を規定した法律がないので、権利の範囲が曖昧なのも違法になりにくい理由です。裁判に持ち込んでも規定する法律がないので、拠り所となるものがなく、これまでの判例でも違法性が認められたものもあれば、そうでないものもあることがこの理由といえるでしょう。
判例もまだたくさんあるわけでもないので、今後同じような裁判が続けば、曖昧さは多少なくなってくるかもしれません。
検索エンジンの公共性の担保
検索エンジンとしては、公共性の担保を理由に違法にならない理由の1つです。過去には、「サジェスト汚染を受けた被害者の不利益よりもサジェストを削除することで検索サービス利用者が受ける不利益を上回るとは言えない」といった判決もあります。
検索サービスは公共性を重視しており、削除要請が通らないことも考えられるため、なかなか削除が難しいと考えてもいいでしょう。
サジェスト汚染を改善するには?
では、サジェスト汚染を改善するにはどうすればいいでしょうか。
具体的には、
- 検索エンジンにサジェストの削除申請を行う
- 弁護士に相談する
- 逆SEO対策業者に依頼する
が挙げられます。
検索エンジンにサジェストの削除申請を行う
まずは検索エンジン側にサジェストの削除申請を行いましょう。サジェスト削除申請が通れば削除される可能性があります。
これは誰かに頼む必要なく、個人ですぐにできるので、もしサジェスト汚染の被害に遭っている場合は、すぐに試してください。
しかし、全ての申請が通るとは限らないので、削除申請を出せば終わりとは考えてはいけません。削除申請が通る可能性はそこまで高くないですし、もし通ったとしても削除されるのはサジェストのみです。
掲示板やブログなどネガティブな印象を与えているコンテンツ掲載をしているWebサイトは削除されません。
弁護士に相談をする
弁護士に相談してサジェスト汚染を解消することも可能です。法律のプロである弁護士に相談すれば、法律に基づいた解決を期待できるため、個人で削除申請を出すよりも確率を上げられるでしょう。
ただし注意点としては、インターネットに詳しい弁護士でなければなりません。まだまだ判例も多くなく、インターネットを知らない弁護士ではサジェスト汚染と言っても話が通じない可能性もあります。
過去にサジェスト汚染の対応をしたことがある弁護士に相談するといいでしょう。
逆SEO対策業者に依頼する
サジェスト汚染によって検索されたページをあまり見られないように逆SEOを行い、検索順位を下げる対策業者への依頼も改善方法の1つです。企業であれば求人サイトやSNS、ブログなどの検索順位を上げて、サジェスト汚染の対象となっているページの順位を下げる対策となります。
しかし、効果が出るのが半年以上先となるので即効性はありません。すぐにサジェスト汚染を解消したい場合は、弁護士に相談して検索エンジンに削除してもらうのが一番早いでしょう。
サジェスト汚染は海外では違法になることも?
海外では日本ではまだ認められにくい「忘れられる権利」が認め始められており、違法となる場合もあります。実際に欧州では欧州司法裁判所によってEU域内では「忘れられる権利」を認める旨の発言がありました。
2018年5月に施行された「一般データ保護規則(GDPR)」によって、検索エンジン運営企業に個人情報を含むリンクの削除を求める権利が明文化されたからです。
欧米では忘れられる権利を求めて闘う人も多く、日本とは論調が違います。そのため、海外ではサジェスト汚染が違法となることもあると覚えておくといいでしょう。
サジェスト汚染の影響とは?
サジェスト汚染の影響には、
- 事実無根の情報が事実として認識される
- ブランドイメージや企業イメージが毀損される
- 良質なユーザーを検索エンジンから確保できなくなる
の3つがあります。
事実無根の情報が事実として認識される
サジェスト汚染により、事実無根の情報が事実として認識されてしまいます。企業や商品名を検索したユーザーがサジェストとしてネガティブなワードが出てくると、検索した人が多数いると思い込み、事実と勘違いするのは当然でしょう。
そのため、サジェスト汚染を放っておくと事実無根の情報が事実として思われるので早急な解決が必要でしょう。
ブランドイメージや企業イメージが毀損される
サジェスト汚染によりブランドイメージや企業イメージも損なわれます。ネガティブワードが自動で表示されるサジェストは、検索したユーザーに悪影響しかありません。
ブランドや企業に悪い印象を持たれてしまうでしょう。
良質なユーザーを検索エンジンから確保できなくなる
もし検索したキーワードと共にネガティブなサジェストワードが出てくると、悪い印象を持ってしまいページを見ることを止めてしまうかもしれません。
良質なユーザーがページを訪問することはなく、逆に悪戯や面白半分の悪質なユーザーが敢えて検索をして訪問することはあるでしょう。しかし、自社にとって訪問してほしいユーザーではないので、意味がありません。
名誉毀損罪の適用条件とは?
名誉毀損罪となる適用条件には、
- 公然
- 事実を摘示
- 人の名誉を毀損
が挙げられます。
公然
公然とは、不特定多数が知る可能性がある状態をいいます。噂として広がっていくような状態をイメージするといいかもしれません。
上記より、事実無根なインターネット上の書き込みは、不特定多数の人間が閲覧できる状態なので公然といえるでしょう。サジェスト汚染も誰にでも閲覧できる状態なので、名誉毀損といえるかもしれません。
公然を理由に検索エンジンに削除要請を出してみるといいでしょう。
事実を摘示
事実の摘示とは、嘘でさえも事実として周囲に伝えると名誉毀損が認められます。インターネット上の投稿も含まれるので、もし事実と反する書き込みがあった場合は、名誉毀損となることもあるかもしれません。
しかし、言葉の羅列と見做され、誰もが同じネガティブな意味で捉えない人もいるので、必ずしも名誉毀損とはいえないでしょう。
人の名誉を毀損
人の名誉を毀損とは、企業や個人が社会から受ける評価を傷つけた場合をいいます。もしサジェスト汚染が起きている場合は、名誉を毀損しているか確認してみてください。
サジェスト汚染で訴えるのが難しい理由とは?
では最後にサジェスト汚染で訴えるのが難しい理由を説明します。
- 汚染の主体が明確でないことが多い
- 適用される法律が曖昧なことが多い
- 海外企業との裁判になることが多く手間がかかる
汚染の主体が明確でないことが多い
キーワードの羅列と見られてしまい、サジェスト汚染の主体が明確でないので訴えるのが難しいと考えられます。
明確に誰もが理解できるものであれば名誉毀損として訴えることもできるでしょうが、サジェストワードだけでは人によって受け取り方も変わるでしょう。
適用される法律が曖昧なことが多い
残念ながら日本にはサジェスト汚染を違法とする明確な法律がありません。
そのため、適用される法律が曖昧となってしまい、訴えるにしても拠り所する法がなければ訴訟を起こすのも難しいでしょう。
海外企業との裁判になることが多く手間がかかる
検索エンジンの運営元はGoogleをはじめ海外企業が多く、裁判となると多くの手間がかかるのでわざわざ訴訟を起こすのも面倒と考える人もいるでしょう。もし訴訟を起こしたとしても時間ばかりが掛かってしまい、労力を考えると訴えづらくなる人も多数います。
サジェスト汚染の違法性について理解しよう
本記事をまとめると、
- サジェスト汚染は忘れられる権利が認められない日本では違法になりにくい
- 過去にはサジェスト削除を命じた判決もあるので、違法にならないわけではない
- 名誉毀損として認められるケースもあるが、労力が掛かってしまう
- サジェスト汚染を改善するには弁護士に相談するといい
- 検索エンジンに削除要請をしても必ずしも認められるわけではない
サジェスト汚染は、どの企業も商品も意図的な悪戯からいつの間にか引きこされる可能性のあるものです。もしサジェスト汚染が発覚したら、必ず認められるわけではないですが、検索エンジンに削除要請を行い、弁護士に相談するといいでしょう。
サジェスト汚染に悩んでいる人がいたら、ぜひ本記事を参考にしてください。