ブランドセーフティとブランドスータビリティの違いとは?転換する施策も解説
今後インターネット広告業界では、ブランドスータビリティが重要になるとご存じですか?
この記事では「ブランドスータビリティ」について解説していきます。
結論、インターネット広告業界は、ブランドスータビリティを高めていかなければ、今後残っていけません。
ブランドセーフティとは若干違う考え方になるので、参考にしてください。
その他にも「ブランドセーフティからブランドスータビリティに転換する方法」や「Yahooの例」についても解説するので、ぜひ参考にしながらブランドスータビリティの取り組みを行ってみてください。
また「JICDAQ」について知りたい方は、こちらで解説を行っていますのでぜひ確認してみてくださいね。
ブランドセーフティとブランドスータビリティ(ブランド適合性)の違い
ブランドセーフティとは、ブランドを毀損する不適切なwebサイトに広告が表示されるリスクから、安全性を確保することを指します。
ブランドセーフティ・アドフラウド・ビューアビリティの3つから成る、アドベリフィケーションの1つです。
たとえば、反社会勢力の運営するwebサイトに広告が掲載されていたら、そのメディアは信頼を無くしてしまいます。このようなwebサイトから広告を排除するのが、ブランドセーフティです。
一方、ブランドスータビリティとは、ブランドセーフティを基準とし、ブランドごとの適合性によってwebサイトを選択することをいいます。
アルコール飲料の広告は、子ども向けの情報を発信しているwebサイトには不適切であり、飲食店を紹介するようなwebサイトへの掲載が望ましいです。
このように、ブランドの広告掲載をwebサイトごとに判断するのがブランドスータビリティとなります。
ブランドスータビリティが求められている理由
ブランドセーフティでは、違法サイトやアダルトサイトなどの不適切なサイトに対する広告を排除してきました。
しかし、webサイトを過剰ブロックしたことにより適切なwebサイトにも広告が掲載されなくなり、ユーザーが認識する機会を失ってしまっているのが現状です。
そのため、過剰ブロックを廃止し、ブランドに適合するwebサイトに広告を掲載する必要があります。
ブランドの保護と広告本来の目的を達成するために、ブランドスータビリティが求められているといえるでしょう。
日本と世界のブランドスータビリティに関する調査
DoubleVerifyのGlobal Insights Report(2022)によると、日本のブランドスータビリティの違反率は前年比で11%減少し、7.3%となっています。
(参考:DoubleVerify)
一方、世界のブランドスータビリティ違反率は2021年と比較して9%減少しており、7.1%まで改善されました。
2020年から連続して減少しており、世界的にメディア品質が高まっているといえるでしょう。
なお、ブランドセーフティ・アドフラウド・ビューアビリティを含めたアドベリフィケーション違反率も減少しており、全体では前年比から21%減の7.8%となっています。
日本のデジタル広告品質に対する取り組みで注目すべき「JICDAQ」
JICDAQは、日本アドバタイザーズ協会、日本広告業協会、日本インタラクティブ広告協会の広告関係3団体が立ち上げたデジタル広告の品質を認証する機構です。
デジタル広告品質の認証の中でも「ブランドセーフティ」と「無効トラフィック対策」についての事業者の業務プロセス有効性を認証しています。
広告主・生活者にとって価値ある広告を届けるために、品質認証事業者や登録事業者の社名を公開。
さらに、JICDAQの理念に賛同するアドバタイザー(広告主)の社名も公開し、広告主と掲載側の相互で安全性を高め合い、広告の品質向上を目指しています。
JICDAQの認証分野
JICDAQの認証分野は、主に以下の2つに分けられます。
- ブランドセーフティ
- 無効トラフィック対策
以下で「ブランドセーフティ」「無効トラフィック対策」をどのように定めているのかを解説します。
ブランドセーフティ
JICDAQでは、広告主のブランドを守り安全性を確保するために、認証事業者が取り組むべき事項を定めています。
なお、ここでいうブランドセーフティとは「広告掲載先の品質確保による広告主ブランドの安全性」です。
広告掲載先の品質確保のために原則を定め、以下に該当する違法サイトへの広告サイト掲載を排除するよう求めています。
- 自殺、殺人
- 売春、児童ポルノ
- 武器、銃刀の売買
- 詐欺、悪質商法
- プライバシー侵害
- ヘイトスピーチ
- 誹謗中傷・名誉棄損
- 偽ブランド品、模倣品
- 海賊版サイト
- リーチサイト
- 覚せい剤の販売、肯定
- 危険ドラッグの販売、肯定
ブランドセーフティ対策としては以下の取り組みを求めています。
- ポリシーの整備・説明・通知
- 取引先に対する審査
- 内部プロセス等の整備
- 技術的対策の導⼊および確認
- 関係機関より提供される情報の利⽤および確認
- 第三者の機能の利⽤、補完の選択
- 取引先への合理的な協⼒
「3」の内部プロセス等の確認ではブランドセーフティに関する社内プロセスの確認や、広告掲載先に関するブランドセーフティ状況の管理。
また、「4」の技術的対策の導入では、適切・不適切な広告掲載先リストの管理やリストによる配信機能に対応しています。
無効トラフィック対策
無効トラフィック対策の認証基準も設けています。
なお、ここでいう無効トラフィックの排除とは「無効と判定されたトラフィックが最終的な広告配信後のレポーティングにおいてインプレッション、クリック等の成果の測定値から除外されること」です。
無効トラフィックは「無効なトラフィック」「一般的な無効なトラフィック」「悪意のある無効なトラフィック」に分類されます。
JICDAQは無効トラフィック対策として、認証事業者に求めている取り組みは、以下のとおりです。
- ポリシーの整備・説明・通知
- 取引先に対する審査
- 内部プロセス等の整備
- 第三者の機能の利⽤、補完の選択
- 業界が推奨する技術標準の導⼊等の対策および利⽤状況の確認
- 取引先への合理的な協⼒
「5」の技術の導入では、リストの適用やパラメーターチェックによるフィルタリングの運用と評価を行っています。
JICDAQの認証種類
JICDAQの認証を受けるためには「第三者検証」「自己宣言」「海外認証に基づく自己宣言」のいずれかの方法で検証をクリアしなければなりません。
認証の有効期間は1年間で、再度認証を受けるにはもう一度検証に合格する必要があります。
以下では、それぞれの検証を受ける方法について解説します。
第三者検証
JICDAQより業務委託された「⼀般社団法⼈⽇本ABC協会」からの外部検証を受ける方法です。
第三者のチェックを受けることにより、業務品質が担保されます。
そのため、理念に賛同するアドバタイザー(広告主)から発注を受けられ、ブランド毀損のリスクを抑えて広告を掲載できるようになるでしょう。
自己宣言
JICDAQの基準を見て申請者が自ら検証し、検証報告書を提出します。
日本ABC協会から確認を受け、検証結果に問題がない場合、認証を受けられる方法です。
第三者が検証するのは提出形式のみであり、自社での検証が必要なことから、リソースがないと受けづらい手法となっています。
海外認証に基づく⾃⼰宣⾔
米国の認証機関であるTAG(TRUSTWORTHY ACCOUNTABILITY GROUP)の認証を受けている事業者の日本法人が、自己宣言と同様の工程で認証を受けられる方法です。
TAGでは広告の品質向上のために高度な技術を求められ、Googleなどの大手広告会社が認定を受けています。
すでに厳しい検証を受けているため、3つの中では最も簡単に認証を受けられる方法です。
ブランドセーフティからブランドスータビリティに転換する方法
従来のブランドセーフティからブランドスータビリティに転換するためには、以下の3つの方法が有効です。
- ブランドの特徴を考える
- メディア・ユーザーへの信頼性を高める
- リスク別でカテゴリを分ける
以下で、具体的な施策を解説するので、ぜひ実践してみてください。
ブランドの特徴を考える
従来のブラックリスト・ホワイトリスト配信によるブランドセーフティ対策では、適切なユーザーの目に広告が届かなくなるデメリットがありました。
ブランドスータビリティはブランドセーフティと異なり、適切なwebサイトを見極め、メディアと継続的にやり取りしていく必要があります。
たとえば、アルコールの広告をシューズ販売のwebサイトに掲載しても、ユーザーの流入は見込めません。
しかし、魚やナッツなどのおつまみを販売するwebサイトに掲載すれば、ユーザーの関心を集め、CVに繋がる可能性があります。
継続的にブランドスータビリティを実施すれば、リードやCVの獲得といった広告の目的を効率的に果たせるようになるでしょう。
メディア・ユーザーへの信頼性を高める
Integral Ad Scienceの調査では、日本の消費者の87%が、低品質なコンテンツに表示された広告のブランドは「鬱陶しいと感じる」と回答しました。
また、IBA社(Interactive Advertising Bureau)によると、消費者の 84% は、信頼できるソースに広告を掲載しているブランドについては、信頼性が向上または継続したと回答。
2つの調査結果を見ると、高品質で信頼できるコンテンツへの広告掲載がブランドに良い影響を及ぼすとわかります。
信頼できるメディアと長期的に契約することで、今まで以上にユーザーの流入を見込めるでしょう。
リスク別でカテゴリを分ける
ツールを使ってリスク別にカテゴリを分ける方法で、ブランドスータビリティを実践できます。
リスク別に分類するツールを使えば、コンテンツがブランドに適合しているかを「ハイリスク」「ミドルリスク」「ローリスク」に分けられるようになるからです。
ブランドは広告をどのリスク階層に掲載するか決めれば、過剰なブロックをしなくても配信できます。
多くのユーザーに目を止めてもらいたい場合、ミドルリスクとローリスクを選択。
リスクを最小限にして配信したい場合は、ローリスクのみを選択し、広告を掲載します。
ツールを用いることで、過剰ブロックにより対象外となった多くのコンテンツで広告を掲載できるようになるでしょう。
Yahooのブランドスータビリティの例
Yahooはブランドセーフティ対策として「広告配信ガイドライン」を設けています。
事前審査と事後パトロール、リアルタイム検知により不適切と判断されたコンテンツの広告は即ブロックしており、広告の品質向上に努めています。
Yahooのブランドスータビリティには「プレイスターゲティング」と「コンテンツキーワードターゲティング」の2つ。
以下では、それぞれの施策でどのような効果があるのかについて解説します。
プレイスメントターゲティング
広告を配信する、または配信対象外とするwebサイトを指定すれば、広告の配信先を制御できます。
いわゆるブラック(ホワイト)リスト配信です。
商品と相性の良いwebサイトがある場合や、ターゲットがはっきりと想定できる場合に効果的な手法です。
少ない予算で効果が見込める一方、広告が突然停止する可能性がある点に注意しましょう。
コンテンツキーワードターゲティング
広告主ごとに指定したキーワードと関連の高いコンテンツに、配信する(または除外する)機能です。
配信先のコンテンツを柔軟に調整でき、広告が突然停止しても影響を受けにくい特徴があります。
例として「住宅」をキーワードに設定すると、住宅に関連したwebサイトや動画サービスに広告が配信されます。
除外する場合は、設定したキーワード以外のすべてのコンテンツで広告が配信されますので、ターゲットを絞り込めていない段階で有効な手段となるでしょう。
インターネット広告はブランドセーフティからブランドスータビリティへ
インターネット広告業界は、今からブランドスータビリティに取り組まなければいけません。
今後、インターネット広告業界の規制は、さらに厳しくなっていきます。
だからこそ早い段階で取り組みを行い、他社との差別化を図らなければいけません。
ブランドセーフティもブランドスータビリティも高め、より健全なインターネットの世界を構築していきましょう。