ブラック企業名公表とは?影響や大企業だけの理由も紹介

ブラック企業名公表

ブラック企業名が公表される仕組みが作られたことを知っていますか?

この記事では「ブラック企業名公表」について解説していきます。結論、ブラック企業名公表は大企業を対象にしたものですが、今後全企業に適用される可能性もあります。

企業を検討する際、わかりづらい「ブラック企業名公表」を調査した結果をまとめたので、ぜひ見ていただければと思います。

その他にも「ブラック企業」の説明や、「ブラック企業名公表の基準」について説明していきたいと思いますので、ぜひこの記事を読んでブラック企業名公表について知っていただければ幸いです。

また「ブランディング」について知りたい方は、こちらで解説を行っていますのでぜひ確認してみてくださいね。

ブラックの定義とは?

ブラックの定義とは?
magnifier on the white keyboard on wooden background

ブラック企業に、明確な定義はありません。しかし厚生労働省が平成25年8月に公表した報道資料によると

  • 長い時間の労働
  • 残業代がでない
  • 行き過ぎた指導でパワーハラスメントが疑われる
  • 若い世代が労働力として使い捨てをされている

などが常態化している企業がブラックと認定されています。

ブラック企業として社名を公表される基準とは?

ブラック企業として社名を公表される基準とは?

ブラック企業として社名を公表される基準は、以下のようなものです。

  • 世間的に有名な影響力のある大きな会社
  • 長時間労働が常態化していて1ヶ月あたりの時間外・休日労働が100時間以上である
  • 1つの事業所で10人以上もしくは4分の1以上の方が法律に違反している長時間労働をしている
  • 上記のような状態が1年以上3カ所以上の事業所で認められること

社名公表されるのは大企業が対象で、中小企業は社名公表の対象外です。

ブラック企業名の公表の社会的意義とは?

ブラック企業名の公表の社会的意義とは?

ブラック企業名の公表には、以下の3つのような社会的意義があります。

  • 企業コンプライアンスの引き締め
  • ブラック企業への人材流入の阻止
  • ブラック企業への社会的制裁

それぞれを見ていきましょう。

企業コンプライアンスの引き締め

ブラック企業と公表されると、世間から厳しい目で見られます

社会的な信用度が下がり、企業経営に大きなダメージとなるでしょう。その結果、今まで以上に企業が法律の徹底遵守を考えるようになります。

企業コンプライアンスに対する気が引き締められるようになり、労働者が働きやすい環境作りにつながるでしょう。

ブラック企業への人材流入の阻止

ブラック企業への人材流入の阻止

ブラック企業と公表されると、入社希望者が少なくなります

近年では、就職や転職活動で企業名を検索することは定番になりつつあります。ブラック企業と公表された企業に、入社を希望する方は多くありません。

その結果ブラック企業の入社試験を受ける方が減り、長時間労働で苦しむ若者を減らすことが期待できます。

ブラック企業への社会的制裁

ブラック企業と公表されると、社会的な制裁を受けます

具体的には、

  • サービスや商品の不買運動が起こる
  • 取引先との契約が見直される
  • 業界内での地位の低下

などの影響が出るケースが少なくありません。ブラック企業と公表されると経営に大きな影響を与えることもあり、経営陣にとって強いプレッシャーになるでしょう。

ブラック企業かもしれない企業の特徴とは?

ブラック企業かもしれない企業の特徴とは?

公表されていなくてもブラック企業かもしれない企業があります

ブラック企業の疑いがある企業の特徴は、以下の3つがあります。

  • 労働時間の管理が正確に行われていない
  • 未払いの給料・残業代がある
  • パワハラ・セクハラなどのハラスメントが横行している

それぞれを見ていきましょう。

労働時間の管理が正確に行われていない

労働時間の管理が行われていないと、長時間労働につながる恐れがあります

また給与計算が正しく行われず、残業代の未払いが発生しているかもしれません。厚生労働省は2017年に「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」を定めていて、使用者はガイドラインに沿った労働時間の管理に努めないといけません。

労働時間の管理が正確でないのならば、使用者はガイドラインを遵守しておらず、コンプライアンスを軽視しているといえるでしょう。労働時間の管理が行われていない職場は、ブラック企業の可能性があるので注意が必要です。

未払いの給料・残業代がある

未払いの給料・残業代がある

ブラック企業の多くは、給料や残業代が正しく支払われていません

給料を正しく支払わない企業は、労働基準法第24条(賃金の支払)に違反します。労働者には給料を請求する権利がありますが、泣き寝入りする場合も少なくありません。

残業代を支払わない場合も、企業は労働基準法第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)に違反しています。給料・残業代の未払いが横行している場合は、ブラック企業の可能性が高いでしょう。

労働基準監督署や弁護士などに相談するといいでしょう。

パワハラ・セクハラなどのハラスメントが横行している

ブラック企業では、パワハラやセクハラなどのハラスメントで悩む方も少なくありません

ハラスメントとは嫌がらせのことで、受け手が不快に感じたらハラスメントといえます。ハラスメントは30種類以上ありますが、ブラック企業では

  • パワーハラスメント…上司から部下に対して行われるハラスメント
  • セクシュアルハラスメント…性的な言動による嫌がらせ
  • セカンドハラスメント…ハラスメントを訴えた方が周囲から批判され二次被害にあるハラスメント
  • モラルハラスメント…精神的な嫌がらせ
  • マタニティハラスメント…妊娠や出産を理由とした不利益な取り扱い

などが多く聞かれます。

ハラスメントを防止するための「労働施策総合推進法」の改正法が施行され、全ての企業がハラスメントに対する措置が求められています。

パワハラ・セクハラなどのハラスメントが横行している企業はコンプライアンスに違反している状態といえるでしょう。

ブラック企業名公表までのフローとは?

ブラック企業名公表までのフローとは?

ブラック企業であっても、.いきなり企業名が公表されるわけではありません。以下の3つのフローに沿って公表されます。

  • 労働基準監督署長による企業の経営幹部に対する指導
  • 労働局長による企業の経営トップに対する指導
  • 企業名公表

それぞれのフローを詳しく見ていきましょう。

労働基準監督署長による企業の経営幹部に対する指導

まず長時間労働や過労死などが複数の事業場で起こった企業に対して、労働基準監督署の署長が、経営幹部の指導をします。

労働基準監督署長の指導は、各種情報を元に実施されます。

都道府県によっては、企業名を伏せて長時間労働が疑われる事業場に対するその年度の監督指導結果を公表する場合がありますが、企業名を公表することはありません。

労働局長による企業の経営トップに対する指導

労働局長による企業の経営トップに対する指導

労働基準監督署長の指導があっても改善されない場合は、労働局長による企業の経営トップに対する指導が行われます

労働局長による指導が行われる場合は、以下の2つの基準によって行われます。

  • 労働基準監督署が指導や監督したことにより、労働法違反が見つかった
  • 残業が月100時間以上で働きすぎにより命を落とした労働者がいるとき

労働局長が指導する場合は悪質と判断され、一般的に企業の代表者が労働局に呼び出されます。

企業名公表

企業名が公表されるのは、労働局の局長による指導が行われた場合です。

公表されるのは名前だけでなく、

  • 企業名
  • 長時間労働を伴う労働時間関係違反の実態
  • 局長から指導書を交付されたこと
  • 企業の早期是正に向けた方針

もあわせて明らかにされます。

そもそもブラック企業名公表の目的とは?

そもそもブラック企業名公表の目的とは?

ブラック企業名を公表する目的は、ブラック企業を減らすことです。

ブラック企業名の公表は重い行政の制裁手段で、労働者を守る取り組みをしています。違法な長時間労働は社会問題になっていて、過労死する事件も話題になりました。

企業名を公表された企業が問題を是正するようになれば、メンタルヘルスの問題も解決につながるでしょう。世間からの監視も期待でき、犠牲となる労働者を減らす効果も期待できます。

ブラック企業名公表では大企業が対象になっている理由とは?

ブラック企業名公表では大企業が対象になっている理由とは?

ブラック企業名公表では、対象は大企業のみです。中小企業が含まれていない理由は大きく3つあります。

  • 社会的影響が大きい
  • 企業名公表による業績への影響が中小企業と比較して小さい
  • 企業に関連する労働者が多い

それぞれを詳しく見ていきましょう。

社会的影響が大きい

大企業は、業界や社会に与える影響が大きいものです。そのためブラック企業名が公表されると、各所への牽制につながります。

例えば過去に企業名が公表されたワタミやゼンショー、電通はテレビでも大きく取り上げられ、世間の関心を集めました

過労死や長時間労働の問題点が、広く知られるきっかけになりました。さらに業界大手が悪い慣習を見直すことで、同じ業界の中小企業もルールを変えるきっかけにもなるでしょう。

企業名公表による業績への影響が中小企業と比較して小さい

企業名公表による業績への影響が中小企業と比較して小さい
Lawyer is explaining about the wrongdoing laws regarding fraud to the client at the office.

中小企業の中にも、労働時間や環境に問題のある企業が少なくありません

しかし企業名を公表してしまうと、規模の小さい中小企業は倒産する可能性があります。現実的に労働基準法を守る働き方は、中小企業では難しいものです。

また大企業よりも中小企業の方が数も多く、全ての企業名を公表すると手間がかかります。大企業であれば倒産するリスクも中小企業よりも低く、労働者が路頭に迷う心配も少ないものです。

企業に関連する労働者が多い

大企業は働いている労働者が多く、労働時間の悪影響を受ける人数も桁違いです。

大企業がブラック企業であれば、多くの犠牲者が出る可能性があります。企業名を公表して労働環境が改善されると、多くの労働者が救われるでしょう。

ブラック企業として公表されることのデメリット

ブラック企業として公表されることのデメリット

ブラック企業として公表されることのデメリットは、以下の3つです。

  • 取引先企業からコンプライアンス意識の低い会社として認識される
  • 従業員の退職が増加する
  • 株価の下降

それぞれを確認していきましょう。

取引先企業からコンプライアンス意識の低い会社として認識される

ブラック企業として公表されると、取引先企業からもよく思われません

最悪の場合、取引終了の可能性があります。取引先企業が減ると、売り上げや業務に支障がでるでしょう。場合によっては事業継続が難しくなる可能性もあります。

取引先企業からの信頼を取り戻すには、コンプライアンスを守っている企業に生まれ変わったことをアピールし続けないとなりません。

元の状態に戻るには、相当の時間が必要です。

従業員の退職が増加する

従業員の退職が増加する

従業員の中には、ブラック企業名公表をきっかけに退職を申し出る場合もあるでしょう。

内定辞退を検討する学生も増え、優秀な人材が流出してしまいます。企業を支える人材が減ると、企業運営に悪影響を与える恐れが高まります。

人が集まらないと、工場や事業所の閉鎖、事業内容の変更を迫られる企業も少なくありません

株価の下降

株式会社の場合は、株価の下落は避けられません

株価の下落によって、銀行から資金の貸出が受けられなくなる可能性もあります。企業財務が悪くなり、企業の存続が危うくなってきます。株主や市場関係者からの信頼を回復するには、時間がかかるものです。

また企業買収のターゲットになる恐れもあり、経営陣が入れ替わる可能性もあります

企業買収をした投資家が敵対的買収を仕掛けてきた場合は、世間にネガティブな印象を与え、ブランドイメージがさらに悪くなるかもしれません。株価の下降や敵対的買収は従業員の不安にもつながり、大量に退職者が出る恐れも高まり、悪循環が続くでしょう。

ブラック企業名公表について理解しよう

ブラック企業名公表について理解しよう

この記事の結論をまとめると、

  • ブラックの定義は法律では定められていないが長時間労働が慢性化していることやパワハラなどが挙げられる
  • 長時間労働が続く大企業がブラック企業として名前を公表される
  • ブラック企業と公表されると企業コンプライアンスの引き締めにつながる
  • 労働時間の管理が正確に行われていない企業はブラック企業の可能性がある
  • ブラック企業名公表の前に労働局長による企業の経営トップに対する指導が行われる
  • ブラック企業名公表の目的は労働環境の改善
  • 社会的影響が大きい大企業の名前が公表される
  • ブラック企業として公表されると経営に悪影響がある

今回の記事を参考にしてブラック企業名公表について理解を深めてみてください。